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あしがら彩人記

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焼肉松田園

松田の〝味〟と〝風景〟を継承したい!
西湘の農業の旗手が舵を切った、「焼肉店」という新たな挑戦

新松田駅前にあるビルの2階に大きく書かれた〝炭火焼肉〟の文字。
どこか懐かしさを感じさせる佇まいの「焼肉松田園」。
いちご栽培でおなじみの「SANO FARM」の代表であり、西湘エリアの農業生産者グループ「西湘うみかぜふぁーむ」の副会長でもある、佐野晃一さんの経営するお店です。

〝農業〟と〝焼肉〟というと驚く人も多いかもしれませんが、ここに至るまで、佐野さんにとってはごく自然な流れでした。
きっかけは、この場所で50年焼肉店を続けてきた「大松園」さんが閉店する際、佐野さんが「味を引き継ぎたい」と店主の秋田谷さんに提案したこと。
勢いのままに、まず佐野さんはこの店舗の物件を申し込み。
数ヶ月間秋田谷さんとやりとりを重ねながら、韓国料理店として営業したのち、昨年12月、いよいよ味を伝授できることが決まったことで、〝焼肉店〟として舵を切ったのです。

目指すのは「大松園さんと〝全く同じ味〟にする」こと

とはいえ、ひとことで「味を引き継ぐ」といっても、それほど簡単なことではありません。
しかも佐野さんには農業の仕事もありました。
朝5時前から農業、夜の12時まで飲食店、帰宅は深夜2時…そんなサイクルが続いた時期もあったそうです。
「今は、いちごの方は従業員さんにある程度覚えてもらって、少しは身体が空くようになったんですけど。まあ、大変です(笑)」
それでも意志を貫きたいと思ったのは、新松田駅前の原風景でもあった「大松園」さんの存在と、その味を守りたいという熱意からでした。
「最近は、大松園さんの常連だったお客さんも『これなら合格』とか『これで一緒になったね』って言ってくれるようになって」
当時の味を知る人に認められたことで目標は達成…と思いきや、目指しているのは今も「大松園さんと〝全く同じ味〟にする」こと。
「お客さんが全員『もう大松園の味だ』って言ってくれるまで、僕の目標は変わりません」

農業と飲食の現場でめぐらせる、課題解決への思い

もうひとつ、佐野さんが飲食店をはじめた理由には、自身の根幹である〝農業〟への思いもありました。
農家は年々減っていく一方、30年後には日本の農業はどうなっているかわからない…と語る佐野さん。
野菜が価格高騰で手に入れにくくなっているという現状も含めて、農業の課題は飲食店の課題でもある、と断言します。
その解決のために、ずっと佐野さんがやろうとしているのが、〝新しい農業形態の構築〟。
「〝地元のものを地元でまわす〟というのを、構築していきたいんです」
それが「西湘うみかぜふぁーむ」をはじめた理由でもあり、飲食店「焼肉松田園」の店主として現場に立つ理由のひとつでもありました。
「まず、ここで使う野菜を全部西湘エリアの野菜で…というのをやりたいですね。まだない野菜もあるので。自分でつくったり、仲間に頼んだりして」
農業と飲食、日々それぞれの現場に身を置きながら、課題解決への思いをめぐらせています。

よみがえりはじめた、新松田駅前の焼肉を囲む風景

焼肉店としてスタートして2ヶ月。
「大松園(の味)が復活した」と周りに広まってきたことで、当時のお客さんの足も徐々に戻るようになってきました。
よみがえりはじめた、新松田駅前の焼肉を囲む風景。
味と同じくらい佐野さんが継承したいと思っていたのも、そうした〝地域の人たちが帰ってくる場所〟としての存在でした。
子供の頃からここに通っていた佐野さん、秋田谷さんたち大人が、厳しくもあたたかく見守っていてくれる、アットホームな場所だったと振り返ります。
「これからも全く同じ、そういう雰囲気にしたいんです」

〝農業〟と〝飲食店〟の未来。
松田の〝味〟と〝風景〟の継承。
考えるだけで壮大な道行きですが、色々な人にアドバイスをもらい、サポートを受けながら、一歩ずつ歩みを進めています。
足柄上商工会もそのひとつであり、「必要不可欠な存在」と佐野さん。
「要所要所で補助金の相談にのってもらったりしていることもそうですが、何より、常にバックアップしてくれてる、応援してくれてると感じられるのが、心強いです」

夢は、「100年続く店にする」こと

お店の一番の人気は、「大松園」さんが発祥といっても過言ではないほど歴史のある定番メニュー「カルビ麺」。
またワンコインで食べられる「学生定食」も、赤字になるとスタッフに反対されつつも、価格の維持にこだわり続けている大切なメニュー。
「僕自身学生の時も食べていて。腹減ったなあ、でもお金ないなあというときに、ここが助けてくれてたんです。だから、今の学生にも腹減ったら食いに来いって言いたい。(価格面では)おじさんが苦しめばいいからって」

掲げる夢は、「100年続く店にする」こと。
「秋田谷さんが50年頑張ってくれたので、僕が50年頑張って、また次につなげて」
到達できそうな目標はつくりたくない、と佐野さん。
「はるか上を目指して、そこに近づこうとしていけば、普通より色々なことを超えることができる。農業でもやってきたことなので」
農業で培った行動力と、手を取り合う仲間、尊敬する人、支えてくれる商工会や周りの人たち。
様々なパワーとつながりを胸に、これからも大きな課題に向かって邁進していきます。

【策定した事業計画】
神奈川県版持続化補助金/ハウス計画

《本記事は令和6年度伴走型小規模事業者支援推進事業により掲載しています。》

焼肉松田園

住所:〒258-0003
神奈川県足柄上郡松田町松田惣領1215 新松田駅前店舗ビル 2F
電話番号:0465-87-7953
創業:2024年
代表者:佐野晃一さん
定休日:火