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あしがら彩人記

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三谷たたみ店

職人の技術×最新機器の能力!
柔軟な発想力が武器の、地域に根ざした畳屋さん。

大井町役場近く、国道255号線とクロスして走る御殿場線沿いに、大きな看板と緑一色の壁という印象的な姿でそびえ立つ「三谷たたみ店」。
代表の三谷誠さんは、同店二代目であると同時に、三谷家では三代目となる〝職人〟さん。
というのも、三谷さんのお祖父さんは、小田原市板橋で山縣有朋の別邸や古稀庵の庭などをつくっていたという石屋さん。
お父さんの代に、修行を経て「畳屋」として独立。三谷さんが小学生のころに現在の場所へと移転し、地域のお客さんとのつながりをひとつひとつ築きあげながら、今のかたちをつくっていきました。
また三谷さん自身も、その職人魂を受け継ぐかのように、熱い思いと磨き上げた技術をもって、日々お客さんの信頼に応え続けています。

コロナ禍により状況は一変。
取引先は自然消滅、売り上げは大幅に減少。

主なお客さんは、個人の他にも、新築時に畳を入れる工務店や設計事務所、大工さん、多くの和室を持っている旅館など。
特に旅館はお得意様のひとつでもあり、以前は、数日で何百枚もの畳を納めるような案件もあったといいます。
けれど、突如訪れたコロナ禍により状況は一変。
行楽や観光の自粛から宿泊業は軒並み営業ストップ。経営母体が変わるところや閉店するところも出てきて、自然消滅のようにいくつかの取引先はなくなってしまいました。
また人との接触が避けられていた時期でもあり、個人の方も、寝室などに使われることの多い和室に、三谷さんたちを招き入れることが少なくなっていったのです。
「畳替えは、食べたり飲んだりすることと違って今急いでやらなきゃいけないというものでもない。わからなくはないんです」
状況に理解を示しつつも、結果として売り上げは大幅に減少。
「飲食店のような補償もないし…あのときは辛かったですね」と、当時を振り返ります。

発揮されはじめた、柔軟な発想力と行動力。
目指すは〝薄い畳〟への対応力!

(香港の寿司店VIPルームの障子)

そんななか発揮されるようになっていったのが、先を見越した三谷さんの柔軟な発想力と、それをかたちにする行動力でした。
コロナ禍の際には〝障子に印刷できるプリンター〟を導入。
三谷さんに代が変わって、襖や障子などの注文も受けるようになっていたこともあり、畳が駄目なら他のもの…と目線を変え、〝障子にグラフィカルな絵を印刷する〟といった新展開を試みることにしたのです。
このとき相談から補助金活用などのバックアップまでを伴走したのが、足柄上商工会でした。
コロナ禍がひと段落し、けれど変わらず減少し続けている「畳」のニーズに思い悩む三谷さんの脳裏に再び浮かんだのも、商工会の存在でした。
打開策として三谷さんが考えたのは、〝薄い畳〟への対応力。
今までは、畳の部屋があるのも、畳の厚みが60mmなのも当たり前。畳屋さんにはその作業に適した機器が揃えられていました。
けれど、これからはその当たり前がなくなっていく、と考えたのです。
例えばフローリングの厚みはおよそ12〜15mm。15mm程度の薄さの畳があれば、家のつくりを変えることなく、フローリングの代わりに畳を入れることが可能になります。畳にとってのチャンスが広がるのです。
とはいえ、薄い畳をつくろうとすれば芯材にもバラつきが出て、なかには硬い素材もあるため、現在の機器では思う寸法で綺麗につくることは難しいだろうことも想定されました。
商工会とヒアリングを重ねていき、最終的に三谷さんが導入を決意したのが、「チップソー型平刺専用機」。
目的は〝切断の仕上がりの美しさ〟でしたが、それまで手作業だった寸法の反映をオンラインでできるようになったこともあり、効率面でも大きな効果を得られるようになっていきました。

施工者として名前が出なくてもいい。
「『できません』『わかりません』は言いたくないんです」

もちろん、新機の能力はそれだけではありません。
その力を最大限に発揮したのが、いわゆる〝紋縁〟といわれる、紋様のある畳縁の案件のときでした。
お寺や神社などに使われることの多い紋縁は、今まであまり縁のある仕事ではありませんでしたが、ある大きなお寺の施工の際、担当の畳屋さんでは難しいということで、下請けのようなかたちで三谷さんに依頼がきたのです。
紋縁の対応の難しさは、何より、隣り合う縁の紋様を正確に合わせること。
紋の大きさは必ずしも同じでなく、畳のサイズが紋のバランスと異なる場合もあって、より精密な技術が求められます。
畳の芯をつくり、ゴザを縫いつけ、紋縁を縫いつけて…といった工程を2回3回と繰り返してようやく1枚の畳になるような、気の遠くなる作業です。
それが同機を使用することで、なんと1回で縫いながら完了。当然、仕上がりが正確で美しいことは言わずもがな。
依頼主にも大いに感謝され、三谷さん自身も手応えとやりがいを感じるような案件となりました。

とはいえ、あくまで下請け作業。施工者として表に名前が出ることはありません。
けれど、「別に、自分がやったよって説明しなくてもいい」と三谷さん。
「ただ、『できません』『わかりません』は言いたくないんです」
どこか誇らしげな、職人さんらしい表情で微笑みます。

大切にしたい、お客さんたちとの交流。
「困ったときに自分の顔が浮かぶのが嬉しい」

厳しい状況の中でも、技術を裏支えする発想力と行動力で販路を切り開いていき、邁進する三谷さん。
一方で、今まで培ってきた地域のお客さんたちとの交流も大切にしていきたいと話します。
実際にお客さんたちからの信頼も厚く、プライベートで困ったときに連絡がくることも多いのだそう。
「『トイレの鍵が閉まって開かなくなっちゃった、三谷さーん』とか、この前は『猫を病院に連れて行きたいんだけど、どうしたらいいかわからないー』って電話がかかってきたり」
自ら〝何でも屋〟と称して笑いながらも、「そういうときに自分の顔が浮かぶのが嬉しい」とも。
猫の相談の際は、捕まえて車に乗せるところから病院の診察室に一緒に入るところまでを付き添ったのだそう。
新機器導入による効率化で生じた時間も、預かっている他の品物の作業へと還元。少しでも早くお客さんのもとへと返せるようにと心がけます。
「うちは2人しかいないので、畳の仕事が終わってから襖と障子をつくるんです。少しでも畳が早く終われば、その分そっちの作業ができる。特に今は襖や障子がないと寒い季節。できるだけ早く持っていってあげたいなと」
今後については「畳だけでは駄目だなとは思う」としながらも、「地域に根付いて、お客さんとコミュニケーション取りながら、畳やおうちのことともやりつつ、これからも進んでいきたい」と展望を語ります。
たたき上げで積み上げた技術と、それを強力にサポートする最新機器の能力。そしてお客さんとの交流と、その生活への仕事の還元。
たくさんの職人さんを抱えているような大手とはまたひと味違う、同店らしい道行きを目指します。

【策定した事業計画】
令和7年度神奈川県生産性向上促進事業費補助金事業計画 

《本記事は令和7年度伴走型小規模事業者支援推進事業により掲載しています。》

三谷たたみ店

住所:〒258-0019
足柄上郡大井町金子1836
電話番号:0465-83-4445
創業:昭和46年
代表者:三谷誠さん
HP:https://mitani-tatami.com/
営業時間:8:00~18:00(お客様のご都合で変動あり)
定休日:不定休